エルムの森だより

北海道大学教職員組合執行委員会ブログ

学長選、「意向聴取」有権者の範囲拡大の謎

北大の学長候補者の選考は、推薦された者が2名以上いた場合、学内の有権者による「意向聴取」投票を経て、総長選考会議が選考します。「意向聴取」投票の有権者は、「国立大学法人北海道大学総長選考会議規程」により定められています。

 

この規程が今年6/3の選考会議において改正されました(10/1施行)。教員の有権者は、教授・准教授・講師と従来通りですが、職員の有権者の範囲はこれまで課長級までだったのを、今回、課長補佐級にまで拡大したのです。

 

全学の教職員の意思を選考に反映すべきだという考え方に照らせば、有権者の範囲が拡大することは望ましいことです。しかし、なぜ課長補佐級までなのでしょうか。

 

3/18の選考会議の議事要旨には、

 

「教員以外の職員の意向聴取対象者の範囲に「課長補佐相当職」を含めることについては,大学運営に相当の経験と責任を有する者に限定して考える必要がある。」

 

と記されています。

 

この段階では、選考会議は、課長補佐級の職員を有権者とすることに慎重だったのです。ところが、それから3カ月で、有権者を課長補佐級の事務職員にまで拡大した理由を選考会議は明らかにしていません。

 

また、課長補佐級(一般職基本給表(A)4級)ということであれば、技術専門職員の中にも同等の者はいるはずです。しかし、今回の規程改正では、なぜか技術専門職員を有権者に含めていません。

 

選考会議は、文字通り現場の1人1人教職員が大学運営を担っていることを忘れているのではないでしょうか。そして、そのことが、大幅な教員人件費削減の影響の現場、特に任期付教員など立場の弱い者へのしわ寄せにつながっているのではないでしょうか。

北大の「人件費ポイントシステム」は、第2期中期目標期間にすでに破綻していた?!

北大の大学院研究院(研究科)等の部局の専任教員の人件費管理は、「ポイント制教員人件費管理システム」という独自の制度により行っています。これは、2006(平成18)年度に導入されたもので、各部局の教員数を「ポイント」(教授:1.0、准教授:0.8、講師:0.7、助教・助手:0.6)に置き換え「総ポイント」を算出、「各研究科等はその範囲であれば、職種及び員数にとらわれない教員の配置が可能」というものでした(平成18事業年度に係る業務の実績に関する報告書)。たとえば、ある部局の「総ポイント」が30だったとすると、例えば、教授22人と准教授10人を雇うことができます。あるいは、教授16人、准教授10人、助教10人を雇ってもよい、というものです。

 

2016年8月の教員人件費削減提案は、この「人件費ポイント」を、全学で205.5、すなわち教授205人分(正確には205.5人分)も減らそうというものです。この205.5ポイントを対象となる部局に割り振り、それぞれの組織の「総ポイント」を5年間かけて削減していくというのです。当然、各部局の人事可能な教員数は減っていきます。現員のポイントの合計が「総ポイント」を越えた組織では、昇任人事(准教授から教授へ、など)や退職者の補充を行うことができなくなってしまいます。これでは退職者が出るたびにその研究・教育分野が消滅し、組織がガタガタになってしまいます。士気の低下も避けられません。この教員人件費削減をどうするかは、現在行われている学長選の一大争点になっています。

 

ところで、11/21の部局長等連絡会議で配付された「教員人件費ポイント削減数と削減額について」という資料を見ていて驚きました。

 

「執行残ポイント部分(灰色部分)については、第2期の交付金削減対応として既に使用されており財源は無いため削減効果は得られない。」

 

と書いてあるのです(下の画像参照)。

 

「残ポイント」とは、各部局が「総ポイント」いっぱいまで人事を行っておらず、使い残した分のことです。第2期中期目標期間、この分の財源を運営費交付金の削減対応として使用してきた、つまり、その時点で各部局は「総ポイント」いっぱいまで人事を行うことはできない状態だった、というのです。そして、財源の不足を「残ポイント」でもカバーできなくなったため、とうとう「使っているポイント」にも手をつけなければならなくなったのが現在の状況です。これは、鳴り物入りで導入された北大の「ポイント制教員人件費管理システム」はわずか数年で事実上破綻していた、ということを意味するのではないでしょうか。

 

もしそうならば、なぜこの破綻を多くの教職員は知らされなかったのか、破綻の原因をつくったのは誰なのか、が問われることになります。これは直接には、北大の個別的な経営問題ですが、それだけではありません。運営費交付金のしくみをはじめとする国立大学法人財政制度にもメスを入れなければなりません。

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北大 大幅な教員削減案(読売新聞12/3朝刊・道総合面)

教員人件費削減問題は、2017年学長選の一大争点になっています。

 

読売新聞12/3朝刊の記事は、11/30に開催された「公開質疑」でも、真っ先にこの問題が取り上げられたことを報じています。ただし、報道陣はシャットアウトされていたため、ソースは参加者からの聴き取りに頼らざるを得ませんでした。社会の公器である大学の学長選考過程は、教職員・学生ら大学構成員はもちろん、広く市民にも開かれたものであるべきです。

 

教員人件費削減問題が学長選の争点であることは、北海道新聞11/30朝刊も報道しています。この記事では、北大教職員組合が学長候補者に対してアンケートを行ったことを紹介していただきました。アンケートの結果は教職員組合のホームページに掲載しています。

http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kumiai/

国立大交付金 野放図な減額は疑問だ(北海道新聞12/2社説)

地元紙の社説です。

 

「時間をかけた基礎研究などに取り組む研究者はますます減るだろう。実用化や応用ばかりが重視され、人文社会系の研究は理系以上に先細りが懸念される。」

「資金が欲しい一部の研究者が、軍事技術に応用可能な研究に資金を出す防衛省の制度に注目するのも、こうした背景があるからだ。」

 

大学は、政府機関や営利企業では果たすことのできない社会的責任を負っています。このことを軽視すれば、国民の精神的自立の基盤が失われ、社会に自由がなくなってしまうでしょう。

dd.hokkaido-np.co.jp

北海道新聞は、11/28(土)朝刊でも、「人件費削減案 北大の質低下を懸念」という大きな記事を掲載しています。

 

記事では、理系部局の30代男性助教の声が掲載されています。自由な研究ができることを期待して民間企業から転職してきたのに、今回の教員人件費削減のせいで雇い止めにされそうだというのです。大学経営の失敗を現場、特に任期付の弱い立場の人びとにしわ寄せすべきではありません。

「優秀な人材が逃げる…」地方国立大、人件費削減に悲鳴(朝日新聞11/24)

北大の教員人件費削減問題が連日、新聞報道されています。各紙とも、教員数の削減、大学の研究・教育組織のリストラが、学術と高等教育に深刻な影響を及ぼしていることに警鐘を鳴らしています。

 

朝日新聞の記事では、当ブログも紹介されています。

www.asahi.com

 

国立33大学で定年退職者の補充を凍結 新潟大は人事凍結でゼミ解散(YaHoo newsより)

以下の情報が寄せられました

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北大と同じような状況は全国33国立大にも起きている

ようです

大隅良典さんのノーベル医学生理学賞受賞決定に沸く日本だが、大隅さんの研究の舞台となったのも国立大であり、このまま教員が削減されれば国立大学が地盤沈下しかねない状況だ。」(Yahoo Newsより)

以下の記事の中で文科省は財政が厳しいなら各大学が学費値上げも

ありえるなどと無責任な発言があります

基礎研究の場であり,人材育成の要である国立大の

衰退は国の将来を危うくします

政府文科省の責任は大きいです

 以下YaHoo newsです

headlines.yahoo.co.jp

納得できない北大の年俸制新任教員の給与の一方的削減,対象は百数十名

以下の情報が寄せられました

執行委員会では,この問題を重視して

北大当局に真摯な対応を求めていきます

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新任の年俸制教員の給与が減額となりました

 

今年度はじめ、学内便で大学から通知がとどいた。文面の記憶は正確ではないが、「平成283月をもって総長リーダーシップ経費が終了したことをお知らせします。」という趣旨の1行の文であった。何のことか・・・雲をつかむような内容。

7月になり、年俸制について説明にうかがいたいと所属部局の人事課から連絡があり、人事課長と係長がやってきた。どうやら、昨年度に新任となった年俸制教員の給与が今年から減ることの説明であった。年額492千円であり、月あたり41千円の減額となった。しかし、1年前に受け取った雇用通知書にはそのような時限付の金額が給与に入っていることは一切かかれていないし、説明もなかった。しかし事務サイドは、財源もないので納得してほしいということで、今回の説明を受けて納得したというサインを要求してきた。そもそも誰に対するサインなのかあやしいし、説明も腑に落ちない。このようなことをみとめると雇用通知の内容を事後的に勝手に変えられかねない、という危惧を述べ、事務の2人には帰っていただいた。

8月に入り、今度は本部の事務が2人やってきた。まず部局の事務が対象者へ説明に行き、その後納得いただけない教員(サインをしなかった教員)にはあらためて本部の担当者が説明に行っているとのこと。非常に丁寧で、前回の疑問点についても、きちんと答をもってきていた。こちらから労働基準法をみたが(今回のことは抵触するのでは)と質問したら、裁判は時間がかかるからさけた方がいいです・・・、と逆に牽制された。部局で年俸制の説明が行き届かなかったのだから、改めて大学がちゃんと説明するのが筋ではないのか、と提案したが、難しいです、の一言。さらに、今回このような減額措置の対象となっている新任教員は100数十名もいるといこと!

そもそも、年俸制は国が推進している国公立大学の新たな給与システムであり、昨年度から北大の新任教員として雇用された人は無条件で年俸制での契約となっている。年俸制の中身は、基本給と業績給からなっている。基本給は職階や年齢に応じるが、業績給は前の年の業績評価によって変動する性質にある。年俸制教員は、論文数、学会発表数、学生指導数、授業担当数、外部資金獲得など、いくつかの項目の達成によってランク付けされ、ランクによって業績給が異なる仕組みである。しかし、実際にはどのような項目があり、それがどの程度達成されていればどのランクとなるという明確な基準は、雇用者である教員側に知らされていない不透明なシステムである。

今回のように、雇用通知書に業績給○○○円と書かれているだけでは、その金額の算出根拠もわからない。自分の業績が評価された結果と受けとめるのが普通であろう。まだ業績の評価も経ていない段階で、減額である。事前に部局からも大学からも給与について説明もなく、今回のリーダーシップ経費が減額されるなど、まったく知りようがないのである。労働基準法に違反する事案ではないだろうか?今もって公式な謝罪もなければ、給与の補てん案もない。大学の真摯な対応を求めたい。