エルムの森だより

北海道大学教職員組合執行委員会ブログ

国立大の性格を大きく変更する指定国立大法案

指定国立大法案が

いつの間にか国会審議されているという
情報が寄せられました
 
指定国立大は,今までの「教育研究のための
国立大学」から大学の性格を大きく変更するものであり
慎重な審議を必要とすると思います
指定国立大では,その使命が産業競争力への貢献と
されているようで,その視野の狭さは大変問題だと思います
昨年の文系学部廃止にも通じるものだと思い
大変心配しています
 
以下,時間があるときにぜひお読みください
 
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投稿日時:2016/04/20 19:35:59


みなさま

昨年来「特定研究大学制度(仮称)」として文科省有識者会議などで検討が進められ、「指定国立大学」としてまとめられたものが、国立大学法人法の改正法案となって国会提出されていました。
(法案概要、新旧対照表などは下記文科省ホームページに掲載)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1367544.htm

その後、参議院先議とされたほかは、予算審議やその後の国会の混乱で法案の取扱いが決まらない状況が続いていましたが、4月13日に参議院の委員会に付託、14日に趣旨説明、昨日19日の午前中の委員会で質疑と討論・採決と急ピッチで審議が進められ、委員会では自民党民進党公明党と無所属議員(松沢成文氏)の賛成、共産党の反対で可決されました。
また、法案賛成の3党と無所属議員の共同提案で6項目の附帯決議が可決されました。
参議院委員会での審議(録画))
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=3608&type=recorded

質疑及び答弁の概要は次のとおりです。

赤池氏(自民党)】
・世界最高水準の研究者を集め世界中から留学生を集めても、国費で行った教育研究成果が国外に流出してしまっては困る、研究成果を活用する事業者への出資は指定国立大学に限らず認めていくべきではないか、などと質問。
・常盤高等教育局長が、頭脳流出防止のためにも高い処遇やキャリアパスを用意するほか情報管理を徹底したい、研究成果活用事業者への出資は当面民間企業等への技術支援、教育プログラムなどを実施していく上で質の高い研究成果が豊富に存在する指定国立大学に限るが、制度運用の実績をみて指定国立大以外の国立大での出資の規制緩和も検討していきたい、などと答弁。

【那谷屋氏(民進党)】
・指定国立大学法人になることでどんなメリットやインセンティブがあるのか、産業競争力強化が国立大学の役割として強調されることで昨年6月の「文系廃止・見直し」通知のように国立大学に対して誤ったシグナルを送ることにならないか、余裕金をリスク性のある金融商品で運用して失敗したときの責任問題をどう考えるか、逆に運用に成功したときはすべての国立大学の充実に活用してはどうか、などと質問。
・馳文科相が、「廃止・見直し」通知は落第寸前の誤解を招く内容であり、文理融合やリベラルアーツ教育を含めバランスよく国立大学を発展させたい考えだと改めて釈明。指定国立大学制度はそのための学内外の壁(規制という意味か?)を取り払う目的で導入するものだと答弁。
・常盤局長が、指定国立大学に対しては各大学の要望を聞きながらスタートアップ資金の配分などの施策を行うことを考えている、余裕金の運用の規制緩和は寄附金や寄附金を原資とする資産の売却益等に限られ基盤的経費を毀損するものではない、短期的な損失に過度にとらわれることはない、各大学がリスクを負った結果なので運用益は各大学に帰属、などと答弁。

【斎藤氏(民進党)】
・2016年度予算で奨学金予算は国公私立あわせ98億円増だが、授業料免除予算は12億円増に留まった。今後の学生経済支援充実は学費免除にもっと振り向けるべきと質問。
・馳文科相は、財源の安定的確保、対象者をどうするか、働いている同年代との公平性などに課題があり政府部内で議論していきたいと給付制奨学金に関する最近の国会審議等と変わらない慎重姿勢の答弁。
・博士後期課程への進学者、進学率が国立大学法人化以後3割も減少していることについて原因をどう分析するか、全院協の実態調査によれば博士後期課程院生の25%が500万円以上の奨学金の返済を抱え、8割以上が進路に不安を訴えている、これでは世界最高水準の学術研究を支える人材は育たないと質問。
・馳大臣は、進学者減には景気動向少子化の影響も考えられるが、第5期科学技術基本計画のベースを支える若手人材が減っているのは問題で食い止め策に努力したいと答弁。
文科省は「世界トップ100大学に10校入れる」と言っているが高等教育への公財政支出OECD諸国最低の状況では到底無理。文科省としては一部の大学に資源を集中して地方大学が細っていく(18歳人口減もあり、意図的に細らせる)という政策なのか、そういう方向性には抗していく考えなのか、と質問。
・馳大臣が、指定国立大学はまず数校程度から始め、スタートアップ支援を行いながら最終的に10校程度に拡大していく考え、あくまで財政支出はスタートアップのみなので、地方大の予算を削ることはない、などと答弁。

【新妻氏(公明党)】
・国立大学の施設老朽化(今後5年で築50年以上で未改修が9.7%→23.1%、実験廃水用の配管で30年以上経年したものが63%など)への対策として近年落ち込んでいる施設整備費の充実が必要、大学発ベンチャーの設立数が法人化当初と比べ低迷しておりテコ入れを、などと質問。
・馳大臣から、第4次設備整備5か年計画に基づき体系的に老朽化対策を実施したい、大学発ベンチャーは経営人材の不足などから停滞していると認識しており大学発新産業創出プログラム、グローバルアントレプレナー育成促進事業などで支援したい、などと答弁。

【田村氏(日本共産党)】
・指定国立大学の指定が国立大学法人評価委員会の意見を「聴く」だけ(踏まえる、尊重するなどの文言なし)、で文科相の専権事項とされているのは、従来国立大学法人法で教育研究に関する評価は大学改革支援・学位授与機構が行うピア・レビュー方式の評価を尊重するなど、国立大学への評価はその自主性・自律性を尊重した制度設計の元で行われてきたことに反している、大臣としてどのような基準で判断するつもりなのか、と質問。
・馳大臣から、改正法34条の4第1項の「教育研究上の実績」としては?優秀な人材の獲得や育成、特に海外研究者や留学生について?研究力の更なる強化(特に分野融合や新領域の開拓)?国際協働により、より高度な人材育成拠点へと発展すること?社会連携を進め、より高い教育研究成果で社会に貢献をすることの4点、同じく「管理運営体制及び財政基盤」として?ガバナンスの強化(学長の指導性の発揮、組織的に課題を克服できる仕組みの整備)?財務基盤の強化(基盤経費確保、社会からの支援を得られるか)の6点で評価する考えだと答弁。
・指定国立大学制度は教育研究の現場の要求ではなく、産業界への貢献と、それによって国立大学に「自ら稼ぐ力」を付けさせ公的支援を更に削るねらいによるものではないのか。また、指定国立大学に財政支援をするというば、それは従来の運営費交付金とは別枠で行うのかと質問。
・常盤局長から、社会の変化に対応した国立大学の機能強化を議論してきた、その中で卓越した研究拠点として国際的に貢献したい一定の大学群が積極的に民間との連携を深め、質の高い教育研究活動を実施し、社会からの理解と支援の好循環で財務基盤の多元化を図ってもらいたいと考え本法案を提出した、スタートアップ支援については有識者会議での各国立大学からの意見を踏まえたものだ、と答弁。
馳大臣から、運営費交付金は継続的に同額を確保し、スタートアップ支援は別枠で予算要求したい、他の大学にしわ寄せが行くようでは意味がない、と答弁。
・運営費交付金は2016年度は前年度同額だが、重点支援経費では116%〜75%という大学間格差がつけられた。新潟大では教員の基礎的研究費が前年度13.5万円から今年度3.7万円に削減。文科省が各大学に学内での重点配分も行うよう強く要求した結果だ。「選択と集中」「重点配分」のような考え方が教育研究の現場を疲弊させている、諸外国はいずれも基盤的研究費を充実し、論文数の増加との相関も実証されている、今ノーベル賞を受賞しているような、20〜30年後に成果が評価されるような長期的な視野に立った基礎研究ができる環境がなくなっている、こうした認識を持ち、これまで削減された交付金を復元すべき、と質問。
・馳大臣は、国立大学も競争的環境のもとで努力することが向上につながる、しかし基盤的経費は安定的に確保すべきでこれまでも求めてきた、多様な財源を確保しながら基礎研究の発展に期待したい、などと答弁。

【松沢氏(無所属)】
・指定国立大学、運営費交付金の重点支援、スーパーグローバル大学、卓越大学院など「世界最高水準の大学」を掲げた政策が乱立しており国民にわかりにくい、国際競争力強化には英語力強化が重要でそのためには第二公用語化を検討せよ、などと質問。
・馳大臣から、国公私立通じた支援と国立大学への支援を総合的に行っていく、英語力だけを強化しても研究力強化にはつながらず発達段階に応じて必要な能力がある、それに対応した教授法が大事、などと答弁。

※この他、赤池、松沢両委員からは国旗・国歌問題での質疑がありましたが項を改めて紹介します。

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Asao HABE
 
Astrophysics Group, Division of Physics, Graduate School of Science,
Hokkaido University
Sapporo, Japan
 
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Fax 81-11-727-3498
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