エルムの森だより

北海道大学教職員組合執行委員会ブログ

北大の「人件費ポイントシステム」は、第2期中期目標期間にすでに破綻していた?!

北大の大学院研究院(研究科)等の部局の専任教員の人件費管理は、「ポイント制教員人件費管理システム」という独自の制度により行っています。これは、2006(平成18)年度に導入されたもので、各部局の教員数を「ポイント」(教授:1.0、准教授:0.8、講師:0.7、助教・助手:0.6)に置き換え「総ポイント」を算出、「各研究科等はその範囲であれば、職種及び員数にとらわれない教員の配置が可能」というものでした(平成18事業年度に係る業務の実績に関する報告書)。たとえば、ある部局の「総ポイント」が30だったとすると、例えば、教授22人と准教授10人を雇うことができます。あるいは、教授16人、准教授10人、助教10人を雇ってもよい、というものです。

 

2016年8月の教員人件費削減提案は、この「人件費ポイント」を、全学で205.5、すなわち教授205人分(正確には205.5人分)も減らそうというものです。この205.5ポイントを対象となる部局に割り振り、それぞれの組織の「総ポイント」を5年間かけて削減していくというのです。当然、各部局の人事可能な教員数は減っていきます。現員のポイントの合計が「総ポイント」を越えた組織では、昇任人事(准教授から教授へ、など)や退職者の補充を行うことができなくなってしまいます。これでは退職者が出るたびにその研究・教育分野が消滅し、組織がガタガタになってしまいます。士気の低下も避けられません。この教員人件費削減をどうするかは、現在行われている学長選の一大争点になっています。

 

ところで、11/21の部局長等連絡会議で配付された「教員人件費ポイント削減数と削減額について」という資料を見ていて驚きました。

 

「執行残ポイント部分(灰色部分)については、第2期の交付金削減対応として既に使用されており財源は無いため削減効果は得られない。」

 

と書いてあるのです(下の画像参照)。

 

「残ポイント」とは、各部局が「総ポイント」いっぱいまで人事を行っておらず、使い残した分のことです。第2期中期目標期間、この分の財源を運営費交付金の削減対応として使用してきた、つまり、その時点で各部局は「総ポイント」いっぱいまで人事を行うことはできない状態だった、というのです。そして、財源の不足を「残ポイント」でもカバーできなくなったため、とうとう「使っているポイント」にも手をつけなければならなくなったのが現在の状況です。これは、鳴り物入りで導入された北大の「ポイント制教員人件費管理システム」はわずか数年で事実上破綻していた、ということを意味するのではないでしょうか。

 

もしそうならば、なぜこの破綻を多くの教職員は知らされなかったのか、破綻の原因をつくったのは誰なのか、が問われることになります。これは直接には、北大の個別的な経営問題ですが、それだけではありません。運営費交付金のしくみをはじめとする国立大学法人財政制度にもメスを入れなければなりません。

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